研究 | Research

今や、コンピュータはスマートフォンやスマートウォッチのように身につけるものになり、家電や文房具に入り込み、実世界とインターネットをつなぐものになりました。かつて、計算の道具であったコンピュータは、それらが意識されずに人と人・モノと人・モノとモノを自然につなげるメディアとなっています。米粒ほどの小さなコンピュータが街中に置かれ、モノ自身の判断で人の行動を支援するようになるでしょう。また、五感に相当するセンサとネットワークにより人の認識の範囲が飛躍的に向上するでしょう。

このような新たなメディアの姿を考えるためには、計算機科学やコンピュータネットワークの理解と人間や社会の理解が必要です。当研究室では、未来のコンピュータをどのように作っていけば良いのか? そして、私たちを幸せにすることができるのか? を考えながら、実世界情報を扱う最先端のコンピュータネットワーク・データベース・アプリケーション技術を駆使し、これまで世の中にない新たなメディアを追究します。


研究領域

当研究室は、実世界情報処理について3つのアプローチから研究に取り組んでいます。

Human-activity Recognition

生活の主体である人間。 その行動に関する研究。

Communication/ Networking

時間や空間を超えて、異なる状況にあるヒトやモノ同士をつなぐネットワークの研究。

Location Awareness

ヒトを取り巻く状況の基本は時間と場所。特に位置情報に関する研究。


テーマ一覧
ベクションを用いたスマートフォン使用者の姿勢改善システム

スマートフォン使用時の前方偏位姿勢は、頚部痛やストレートネックの要因となる。本研究では、MediaPipe FaceMeshと端末内蔵センサにより頭部ピッチ角を推定し、画面端に提示するパーティクルによる縦方向ベクション刺激を用いて、使用者の姿勢を自然に改善する手法を提案する。装着物や通知を用いず、スマートフォン利用中に無意識的な姿勢誘導を実現する点が特徴である。

加速度解析に基づく音楽ライブ体験の想起的な再現

本研究は,音楽ライブ参加時の身体動作をウェアラブルデバイスで取得した加速度データから解析し,体験を想起しやすい形で再構成する手法を提案する。加速度信号から行動分類および運動強度・周期性といった特徴指標を抽出し,時系列可視化やハイライト生成,生成AIレポートとして提示するシステムを実装した。検証実験の結果,提案手法は時間経過後の記憶想起における正確性・詳細度の低下を抑制し,ライブ体験の振り返りを効果的に支援することが示された。

音楽ライブにおける時系列分析に基づくコンテキスト反映ペンライト

本研究は,音楽ライブにおける観客の身体動作をリアルタイムに解析し,その状態を光として反映する双方向型ペンライトの設計と評価を行うものである。ペンライト操作時の加速度データから動作の強度・揺らぎ・ピーク性などの特徴量を抽出し,クラスタリングにより観客の盛り上がり状態を段階的に分類する手法を提案した。さらに,分類結果に基づきLEDの色を即時制御するシステムを実装し,観客同士や演者との一体感を高める新しいライブ体験の可能性を示した。

選択のオーバロードに着目した Linear Ballistic Accumulator に基づく冷蔵庫利用行動のモデル化

本研究は,冷蔵庫利用時に生じる「選択のオーバーロード」に着目し,意思決定時間の増加要因を認知モデルに基づいて分析したものである。冷蔵庫内の視覚的特性や環境要因が選択行動に与える影響を,Linear Ballistic Accumulator(LBA)モデルを用いて定量化し,反応時間の速さと安定性を分離して評価した。その結果,過度な強調刺激よりも標準的で自然な照明環境が選択効率を高めることが示され,日常的な家電設計に対する新たな設計指針を提供する。

対戦型格闘ゲームにおける視覚的手掛かり提示を用いた技能向上支援システム

本研究は,対戦型格闘ゲームにおける初心者・中級者の技能上達を支援するため,リアルタイムで介入する視覚的補助システムを提案する。『Street Fighter 6』を対象に,物体検出モデルYOLOを用いて相手キャラクターのジャンプ攻撃の予備動作を検出し,矢印による視覚的手掛かりを提示することで注意誘導を行った。評価実験の結果,ジャンプ攻撃への対処成功率が有意に向上し,介入終了後も効果が維持されることが確認され,実戦的な練習支援手法としての有用性が示された。

視認者情報に基づくリアルタイム動的情報提示システム

本研究は,視認者の位置や視線情報をリアルタイムに推定し,その状態に応じて情報提示位置を動的に変更するシステムを提案・実装したものである。LiDARによる投影候補面推定とカメラ映像に基づく視線推定を組み合わせ,移動体が最適な投影位置へ自律的に移動する手法を構築した。評価実験の結果,視認者の視線に基づく動的提示は,固定提示やランダム提示と比較して視認時間を向上させ,能動的な情報提示手法として有効である可能性が示された。

3D点群データと視認者情報を用いた動的画像投影点探索法

本研究は,3D点群データと視認者の位置・視線情報を用いて,視認性が最大となる画像投影位置を動的に決定する手法を提案する。LiDARにより取得した空間の点群データから投影可能な壁面領域を抽出し,カメラ映像から推定した視線方向および人物位置に基づいて視認性スコアを算出する最適化アルゴリズム(VPS)を設計した。シミュレーションおよび実験の結果,提案手法は固定型やランダム型の提示と比較して視認人数や反応時間の面で優れた性能を示し,動的情報提示手法としての有効性が示された。

加速度センサと照明を用いた学習者の集中力推定とフィードバックシステム

本研究は,オンライン学習環境における学習者の集中度を推定し,リアルタイムにフィードバックを行うシステムの提案を目的とする。筆記中のペンに装着した加速度センサから得られる運動データと,Webカメラ映像に基づく視線・表情情報を統合し,学習中の集中状態を推定する手法を検討した。さらに,推定された集中度に応じて照明の明るさや色を動的に制御することで,集中力の維持・向上を促すフィードバック機構を設計した。今後は機械学習モデルを用いた推定精度の向上と実験的評価を進める。

音楽ライブコンテンツの楽器識別と着用型デバイスによる触覚再現

本研究は,遠隔視聴環境において失われやすい音楽ライブの触覚的臨場感を再現することを目的とし,演奏楽器の識別結果に基づく触覚提示手法を検討する。音響信号を事前に解析して演奏中の楽器を識別し,楽器ごとに異なる振動子を割り当てることで,音の物理量ではなく「楽器」という知覚単位に基づいた触覚再現を目指す。本稿では中間段階として,複数種類の振動子の物理特性測定を行い,楽器別触覚提示を実現するための設計上の課題と指針を整理した。

ユーザ操作ログと心理指標に基づくスマートフォン依存傾向の分類モデル

本研究は,スマートフォン利用における依存傾向を,主観的な質問尺度だけでなく,操作ログに基づいて多面的に捉える分類モデルの構築を目的とする。Android端末上でユーザの起動時間やアプリ滞在時間,操作イベントを取得するアプリケーションを実装し,行動ログを収集する仕組みを設計した。さらに,行動嗜癖モデルやI-PACEモデル,自己決定理論,フロー理論といった複数の心理理論を統合的に用い,利用行動の量だけでなく質的差異を解釈可能なスコア設計を提案した。今後は実データを用いた分類モデルの検証を進める。

サイトスワップ理論に基づくパターン発光ジャグリングボール

本研究は,ジャグリング演技中の状況に応じて発光表現を自動制御するパターン発光ジャグリングボールの開発を目的とする。ボールに内蔵した加速度・角速度センサから取得したデータを用いて,投球・捕球状態をリアルタイムに推定し,サイトスワップ理論に基づいて実行中の技を識別する手法を提案した。識別結果に応じてLEDの発光パターンを制御することで,演技を止めることなく技構造を強調した表現を可能にする。予備実験ではボール状態の高精度な分類が確認され,表現の自由度向上に寄与する可能性が示された。

自己決定理論に基づく青少年バスケットボールプレイヤの自主練習支援法

本研究は,青少年バスケットボールプレイヤの自主練習におけるモチベーション低下や継続困難の課題に対し,自己決定理論に基づく支援手法を提案する。自律性・有能性・関係性の三つの基本的心理欲求に着目し,「達成の可視化」「振り返り」「フィードバック」を中核とする自主練習支援の枠組みを設計した。主観的記録と客観的データを組み合わせることで,練習成果の実感や主体的な意思決定を促し,継続可能で質の高い自主練習の実現を目指す。

気分変化と環境特徴量の関係性に基づく散歩経路推薦システムの提案

本研究は,散歩中の気分変化と街路環境の特徴量との関係性に着目し,個人差を考慮した散歩経路推薦システムを提案する。従来の距離や時間を重視した経路推薦に対し,傾斜,緑視率,道路幅,建物密度といった環境特徴量を用いて道路を評価し,心理的快適性の高い経路を提示する手法を検討した。中間段階として,道路傾斜情報に基づくスコアリング手法を実装し,歩行体験の質を定量的に評価できる可能性を示した。今後は複数特徴量の統合と個人適応型推薦の検証を進める。

フリーポアラテアート上達のための IoT センシングに基づく技能分析と支援システム

本研究は,フリーポアラテアートにおける技能上達を効率的に支援することを目的とし,IoTセンシングに基づく技能分析・支援システムを提案する。完成したラテアート画像に対し,模様の対称性やコントラストなど複数の指標を用いた自動評価手法を構築し,技能を定量的に表現する評価軸を定義した。さらに,ロードセルによる重量計測を用いて注ぎ動作中の流量推定を行い,制作過程と完成結果を対応づけたフィードバックの実現を目指す。初心者が自身の課題を客観的に把握できる支援手法としての有効性が期待される。

ピアノ演奏初心者向け触覚フィードバック提示による基本姿勢定着支援手法

本研究は,ピアノ演奏初心者が基礎的な打鍵フォームを効率的に定着させることを目的とし,触覚フィードバックによる学習支援手法を提案する。Webカメラ映像からMediaPipeを用いて手指の骨格情報を取得し,手首の下がりや指のアーチ崩れといったフォーム逸脱をリアルタイムに検知する。演奏音には干渉せず,逸脱時に振動による触覚刺激を提示することで,音程感を保ったまま直感的な姿勢修正を可能とする。初心者の自主練習におけるフォーム定着支援への有効性が期待される。