今や、コンピュータはスマートフォンやスマートウォッチのように身につけるものになり、家電や文房具に入り込み、実世界とインターネットをつなぐものになりました。かつて、計算の道具であったコンピュータは、それらが意識されずに人と人・モノと人・モノとモノを自然につなげるメディアとなっています。米粒ほどの小さなコンピュータが街中に置かれ、モノ自身の判断で人の行動を支援するようになるでしょう。また、五感に相当するセンサとネットワークにより人の認識の範囲が飛躍的に向上するでしょう。
このような新たなメディアの姿を考えるためには、計算機科学やコンピュータネットワークの理解と人間や社会の理解が必要です。当研究室では、未来のコンピュータをどのように作っていけば良いのか? そして、私たちを幸せにすることができるのか? を考えながら、実世界情報を扱う最先端のコンピュータネットワーク・データベース・アプリケーション技術を駆使し、これまで世の中にない新たなメディアを追究します。
当研究室は、実世界情報処理について3つのアプローチから研究に取り組んでいます。
生活の主体である人間。 その行動に関する研究。
時間や空間を超えて、異なる状況にあるヒトやモノ同士をつなぐネットワークの研究。
ヒトを取り巻く状況の基本は時間と場所。特に位置情報に関する研究。
未来のあるイベントに対して情報を得たいユーザ同士が相互に情報を流通しあう情報基盤環境を考える.ある問い合わせ時点において,ストリームデータとして時系列に次々と発生する移動経路情報および,性別,年齢などの属性に基づいた周囲のユーザの未来のイベントへの遭遇確率を予測する.そして,予測結果から情報に遭遇する可能性の最も高いユーザの絞り込みを行い問い合わせを転送することで,未来のイベントに対する問い合わせを効果的に行う手法を検討する.
会話シミュレーションに基づくコミュニケーション活性化システムの実現を目的として,チャットでのコミュニケーションログを基に発言の繋がりネットワークを構築し,複雑ネットワーク科学のアプローチを用いて組織のコミュニケーションを評価する.組織の生産性の差異によるコミュニケーションの特徴を分析した結果,生産性の高い組織はチームメンバの発言平等度が高く,拡散・集約構造を多く含み,簡潔に終息する話題で構成されていることが明らかになった.
GPSによる測位が困難な屋内や地下空間や,屋外であっても周囲の構造物の影響によりGPS情報が取得できない,または精度が低い場合を想定し,集団における人間同士の社会関係を基に位置情報を推測し補間する測位手法を提案する.具体的には,家族,恋人,友人,知り合いといった社会的関係を有する人間の集団の中で端末の位置情報が欠落した際に,パーソナルスペースから得られる人間相互の適切な間隔を求め確率モデルとセルオートマトンにより推定的に測位を行う.
ネットショッピングサイトにおいて,サイト運営側にとっては,ユーザの良質の商品レビューを増やすことが大切であるが,有用性のないレビューが多いとユーザの不満が多くなり訪問者数の増加はあまり見込めない. 本研究では,レビューにおける評価をジャンル別に評価し,主成分分析を用いて有意差評価をすることによって有用性のあるレビューの特徴を抽出する.
投稿された画像を分析し,得たデータから類似ユーザを見つける手法を検討する.ユーザがハッシュタグを使用する負担を軽減し,これによって,Instagram内で使用する言語に関係なく同じ趣味を持つユーザーを繋げやすくする.
ジオタグ付きツイートを情報源とし,流行りや物理的な特徴を考慮した地域特性によって実世界を階層的に分割し, 効果的な地域特性を可視化する方法を提案する. 特性の抽出方法としてLatent Dirichlet Allocation (LDA)と呼ばれる, 文章が持つ潜在的なトピックを抽出する言語モデルを用いることで, ツイート本文には現れない潜在的な特性を抽出することができる.
加速度センサを組み込んだペンライトなどの応援アイテムが自律的に近距離無線通信を行うことで,観客同士の動作の情報を共有するシステムを提案する.効果的な演出を支援するためには,音楽イベントでリズムに合わせた観客の動作が一体的に揃っている状態が観客に一体感を感じさせ演出の重要な要素となるため,同期科学における集団同期を応用し,観客同士の動作の情報を基に応援アイテムの発光する周期を揃える.以上により,個々の観客の動作から全体の観客の意思に基づき集団的な演出を効果的に行う.